世界一難しい論理クイズ「幼女と3人の神」が解答不可能なレベル

「これは、世界で最も難しいクイズである」

アメリカの哲学者/論理学者であるジョージ・ブーロスが1996年に発表し、あらゆる人間を打ちのめし、「解答不可能」とまで噂された極悪難易度のクイズ。

“The Hardest Logic Puzzle”

「世界一難しい論理パズル」という名を冠したそのクイズは、20年経った今もその名称で呼ばれています。

自力で解けた方は、世界上位0.01%の頭脳の持ち主に入るでしょう。

超難問論理クイズ「2人の幼女とチェス盤の部屋」と同じかそれ以上の難易度を誇る、超難問論理クイズ「幼女と3人の神」をお楽しみください。

問題

真神、偽神、乱神という3人の神がいる。

真神は常に真実を語る。
偽神は常に嘘をつく。
乱神はランダムで真実を言ったり嘘をついたりする。

3人の神は、外見では見分けがつかない。

幼女はこれから、「はい」か「いいえ」で答えられる質問を3回だけ行って、3人の神の正体を完全に特定したい。

各質問はそれぞれ1人の神に対して行う。
質問ごとに相手を変えてもよい。

質問に対して3人の神は「ダー」「ヤー」という返答をする。

「ダー」「ヤー」は「はい」「いいえ」を意味する言葉だが、「ダー」「ヤー」のどちらが「はい」「いいえ」なのかは分からない。

幼女はどのように質問すればよいだろうか?

ただし、神は互いの正体を知っている。

さあ、解いてみよう!

「ただごとではない」という予感しかしません。

真神、偽神、乱神という要素だけならよくある論理クイズですが、「ダー」「ヤー」という返答のどちらが「はい」でどちらが「いいえ」なのか分からないという一点で極悪の難易度に仕上がっています。

これ……解答可能なのでしょうか?

可能です。

100%正解になる解答が存在します。

それでは問題のポイントを振り返っていきましょう!

あ。
余談ですが日本古来の神様なら数え方は「柱」が一般的です。

問題のポイント

乱神という存在

真神、偽神、乱神という3人の神がいる。

真神は常に真実を語る。
偽神は常に嘘をつく。
乱神はランダムで真実を言ったり嘘をついたりする。

本問にはいくつかのランダム要素が登場しますが、最も目につくのが「乱神」。

「気まぐれで本当のことを言ったり嘘をついたりする」存在は、同系統の問題において頻出します。

「人間」。
「ピエロ」。
本問では「乱神」。

「きわめてトリッキーなこの存在をどう扱うか」が大きなポイントになりそうです。

内訳不明の返答

質問に対して3人の神は「ダー」「ヤー」という返答をする。

「ダー」「ヤー」は「はい」「いいえ」を意味する言葉だが、「ダー」「ヤー」のどちらが「はい」「いいえ」なのかは分からない。

本問を象徴する最大の要素。

神たちの返答は、「はい」「いいえ」の内訳が分かりません。

どうすればいいのでしょう?

この初期状態で、3人の神の正体を完全に理解することなどできるのでしょうか?

何か、発想の転換が必要になりそうな……。

チャンスは3回だけ

幼女はこれから、「はい」か「いいえ」で答えられる質問を3回だけ行って、3人の神の正体を完全に特定したい。

質問できるのは3回だけ。

不特定要素が多すぎる本問では、各質問ごとに「何を把握しなければならないか」が明確に決まってきます。

逆算して考えてみましょう。

3回目の質問を終えた段階で、3人の神の正体を把握する。

1回の質問で得られる返答は「はい」か「いいえ」を意味する「ダー」「ヤー」の2通り。

1回につき2通りの情報量。

ならば3回目の質問が始まる前に、少なくとも何を特定していなければならないのか?

互いの正体を知る神

ただし、神は互いの正体を知っている。

一見不可能なこの問題に差し込む一筋の光明。

「神は互いの正体を知っている」という一文。

非常に大きなポイントです。

この点を踏まえて、質問の仕方を考えてみましょう。

ヒント

第1のヒント

特殊な発想は必要ない

超難問論理クイズ「2人の幼女とチェス盤の部屋」では相当の発想力が必要とされましたが、本問ではあまり必要ありません。

形式的には「よくある論理クイズ」で、使用する戦略も基本的に同じです。

類問を知っている方は、少しだけ有利かもしれません。

第2のヒント

本問には、類問が存在する

というわけで類問を紹介します。

論理クイズ「幼女と天国への道」

難問論理クイズ「幼女と天国への階段」

以上の2つにチャレンジしてから本問に挑戦してみると、少しだけ答えに近づいた状態で挑めます。

第3のヒント

2回目の質問が終了した時点で、少なくとも1人の神の正体を特定していなければならない

1回の質問で得られる返答は「はい」か「いいえ」を意味する「ダー」「ヤー」の2通り。

つまり、情報量は「2」。

3回目の質問前に「少なくとも1人の神の正体」が判明している状態でないと、「残り2人のうちどちらが○○か?」という疑問に答えが出ません。

第4のヒント

2回目の質問で、1人の神の正体を把握する

結論から逆算すると、こうなります。

では、1回目の質問は?

第5のヒント

1回目の質問で、「少なくとも乱神ではない1人」を特定する

乱神は、気まぐれで真実を言ったり嘘をついたりします。

原理的に「乱神から有効な答えを得ることは不可能」です。

ならば、最初にすべきなのは「真神か偽神である存在を見つけること」です。

第6のヒント

真神か偽神に対して、非常に有効な質問法がある

類問で登場する要素です。
これを用いて解決にあたります。

次が最後のヒントです。
きわめて核心的なヒントになります。

少し下にスクロールすると最後のヒントがあります。

 

 

 

 

最後のヒント

『ダー』『ヤー』のどちらが「はい」でどちらが「いいえ」なのかは、特定しなくてよい

 

 

 

 

正解

3人の神をABCとする。

1回目の質問:

Aに対し、
「『Bは乱神ですか?』と聞いたらあなたは『ダー』と答えますか?」
と聞く。

答えが『ダー』ならCが、『ヤー』ならBが、乱神ではない神である。

2回目の質問:

乱神ではない神に対し、
「もし『あなたは偽神ですか?』と聞かれたらあなたは『ダー』と答えますか?」
と聞く。

答えが『ダー』ならその神は偽神、『ヤー』なら真神である。

3回目の質問:

2回目と同じ神に対し、
「もし『Aは乱神ですか?』と聞かれたらあなたは『ダー』と答えますか?」
と聞く。

答えが『ダー』ならAが乱神、『ヤー』なら最後の1人が乱神である。

解説

長すぎる解答

あまりにも解答が複雑なので、読むのをあきらめた方も多いでしょう。

ですが、ひとつずつ考えていけば難しい要素はありません。

きわめてシンプルな論理の積み重ねです。

美しいです。
とても綺麗です。

この記事では難解な真理値表は扱わず、簡単な例を用いて解説していきます。

事前準備

この問題を解くにあたり、類問(簡易版問題)となる

論理クイズ「幼女と天国への道」

難問論理クイズ「幼女と天国への階段」

を読むことをおすすめします。

この問題で使用する基本的なロジックが登場しているので、前哨戦としてお試しください。

方針を決めよう

さっそく問題を考察してみましょう。

ポイントとなるのは、ランダムに真実と嘘を述べる「乱神」、そしてYesかNoかわからない返答『ダー』『ヤー』。

質問のチャンスは3回。

有効な答えを得るためには、まず「絶対に乱神ではない1人」を特定する必要があります。

その上で、「その人物が真神なのか偽神なのか」を特定しなければなりません。

最後に、「残り2人の内訳を特定する」ことも必須です。

質問の流れをまとめると、

  1. 乱神ではない1人を特定する
  2. 真神か偽神を特定する
  3. 最後の1人を特定する

となります。

この問題は、『ダー』『ヤー』のどちらが『はい』『いいえ』を意味するのかは最後になっても分からない(分からなくてよい)というポイントに気づけるかどうかが最初のカギです。

二重質問

「もし『○○(仮説)』と聞かれたら、あなたは『××』と答えますか?」

本問の根幹を成す、二重質問。

「いつも真実を言う真神」と、「いつも嘘をつく偽神」に対して有効な質問法です。

例を挙げましょう。

「もし『2+2は4か?(仮説)』と聞かれたら、あなたは『はい』と答えますか?」

真神なら、『はい』と答えます。

偽神なら、『2+2は4か?』という質問には『いいえ』と答えるので、質問文全体に対しては(嘘をついて)『はい』と答えます。

同様に、
「もし『2+2は4か?(仮説)』と聞かれたら、あなたは『いいえ』と答えますか?」
という質問でも、真神と偽神は『いいえ』という返答を返します。


真神も偽神も、『○○(仮説)』が正しければ『××』と答える。

これが二重質問の特徴です。

この存在が、全編を通して非常に重要になってきます。

1回目の質問

目的

1回目の質問の目的は、「少なくとも乱神ではない1人」を特定すること。

乱神は質問に対して有効な答えを返しません。
ただでさえランダムな返答をするのに、『ダー』『ヤー』の真偽が不明だからです。

2回目・3回目の質問を「真神か偽神」に対して行うために、1回目の質問で絶対に乱神でない1人を特定しなければなりません。

質問内容と結果

Aに対し、
「『Bは乱神ですか?』と聞いたらあなたは『ダー』と答えますか?」
と聞く。

答えが『ダー』ならCが、『ヤー』ならBが、乱神ではない神である。

考察

答えが『ダー』の場合

答えが『ダー』の場合、2つの可能性があります。

Aが真神か偽神の場合、『仮説』は正しいことになり、Bは乱神です。

Aが乱神の場合、質問から有効な答えは得られません。

つまり、答えが『ダー』の場合、AかBが乱神です。

Cは確実に乱神ではありません。

答えが『ヤー』の場合

「もし『○○(仮説)』と聞かれたら、あなたは『××』と答えますか?」

という質問に対して、『××』と答えなかった。

つまり、『仮説』が間違っているわけです。

なので答えが『ヤー』の場合、Bは乱神ではないということが確定します。

たった一つの冴えたやりかた

「1回目の質問以降、Aにはしない」という戦略を採ることで、「Aが乱神だった場合」にも上手く対処できるのがポイントです

結果

確実に乱神ではない1人(CかB)を特定した

2回目の質問

目的

「確実に乱神ではない1人」が真神か偽神かを特定する

質問内容と結果

乱神ではない神に対し、
「もし『あなたは偽神ですか?』と聞かれたらあなたは『ダー』と答えますか?」
と聞く。

答えが『ダー』ならその神は偽神、『ヤー』なら真神である。

考察

答えが『ダー』の場合

『仮説』は正しい。

すなわちその神は偽神である。

答えが『ヤー』の場合

『仮説』は間違っている。

すなわちその神は真神である。

結果

真神(もしくは偽神)を特定した。

3回目の質問

目的

残り2人の神の内訳を特定する。

質問内容と結果

2回目と同じ神に対し、
「もし『Aは乱神ですか?』と聞かれたらあなたは『ダー』と答えますか?」
と聞く。

答えが『ダー』ならAは乱神、『ヤー』なら残った1人が乱神である。

考察

答えが『ダー』の場合

『仮説』は正しい。

すなわちAは乱神である。

答えが『ヤー』の場合

『仮説』は間違っている。

すなわちAは真神か偽神であり、最後まで質問をしなかった残りの1人が乱神である。

結果

すべての神の内訳を特定した。

まとめ

論理クイズは面白い

参考

The Hardest Logic Puzzle Ever (Wikipedia)

3人の神様の謎を解ける?―アレックス・ジェンドラー (YouTube)

YouTubeの解説動画が非常にコンパクトにまとまっているので超おすすめです。

140字以内の問題文

外見では区別のつかない真神、偽神、乱神という3人の神がいる
真神は真実を語り、偽神は嘘をつき、乱神はランダムで真実と嘘を語る
Yes/Noで答えられる質問を3回行い全員の正体を特定する
神の返答はダー/ヤー。どちらがYes/Noかは不明
神は互いの正体を知る
どう質問すればよい?

※補足
各質問はそれぞれ1人の神に対して行う
質問ごとに相手を変えてもよい