語学留学の醍醐味とは、いったい何だろう?
「語学力が向上する」。
もちろん、それもある。
しかしぼくは「さまざまな人との出会い」を上位に挙げたい。
引っ込み思案なぼくがそう断言できてしまうほど、フィリピンで語学留学に来る人たちはめちゃくちゃ面白くてすごい人たちなのだ。
今回は、実際にぼくがセブで出会った「面白くてすごい人たち」を紹介していく!
目次
セブ語学留学に来るのはどんな人?
男女比・年齢層・職業
男性と女性の比率は7:3くらいの割合で男性が多い。
意外と一人で来る女性の方は多かった。
ぼくが行ったのは8~9月なので、やはり大学生が多かった。
半分以上は夏休み中の大学生が占めていたのではないかと思う。
次に多かったのは社会人だ。
20代の人はあまり多くなく、長期休暇が取りやすい30代や40代の方が多いという印象だった。
セブは格安で比較的安全なリゾート地なので、基本的に留学生の年齢層は幅広い。
高校生で来ている人もいれば、60代・70代の方もいた。
現地で出来た別の語学学校の友人によると、一人で留学に来た中学生もいるとか。
英語の早期教育の重要性を見抜き、子を連れて親子留学する方も増えているらしい。
フィリピンの中でもトップクラスに安全なセブだから出来る留学である。
なぜ語学留学に来る人は魅力的なのか?
わざわざ(日本より危険な)海外に行こうとする人が来るのが語学留学である。
そういうわけで、どの人も何かしらの目的意識やビジョンを芯に持っている。
ただ単に日本で生きていくだけなら、英語なんて必要ない。
事実、日本は英語を話さなくとも高水準の生活の中で生きていける数少ない国だ。
日本の語学留学生は、使いたくなければ使わなくてすむ英語をそれでも鍛えようと国外にまで来る人たちである。
確固たる理由・信念・必要性を抱えて、国の外に飛び出して実際に行動する人たち。
そんな人たちが面白くないわけがない。
ぼくが実際に出会った留学生の人たち
フクモトさん(40代・妻子持ち・会社員・男性)
出会ったきっかけ
フクモトさんは3人部屋の同居人であり、ぼくが初めて出会った留学生の方だった。
同じ部屋で過ごしたのは一週間のみだが、寝起きを共にするのでやはり会話の頻度が高く、短時間で交友を深められた。
どんな人?
普段は企業に勤めており、会社命令で2週間の語学留学に来たという。
授業が無い自由時間は机のノートパソコンに向かって仕事をこなし、休日は骨休めのためあちこちに出かけていた。
フクモトさんは強靭な精神と肉体の持ち主で、特に筋肉の鎧に覆われた肉体美は格闘選手もかくやという均整の取れようだった。
毎日ぼくが起きるより1時間早く起きその辺を”軽く”ジョギングしたり、近場のジムに行って鍛えたり、休日にはロードバイクをレンタルして山を登ったり周回数十kmはするマクタン島を一周したりと相当アクティブだった。
とにかく実直で陽気な方で、英語勉強も仕事も筋トレもすべて全力投球で色々なことを楽しんでいた。
「フィリピン怖い」「夜外出したら死ぬ」という妄想に陥っていたぼくを連れ出して夕方のレストランに行って下さったのもフクモトさんである。
いざ出てみたら大した危険もなく、レストランの雰囲気も良く価格は目が飛び出るほど安くそしてとびきり美味しかった。
もしフクモトさんがいなかったら、ぼくはフィリピンの外食の素晴らしさを知ることなく帰国していたかもしれない。
カミヤマさん(20代・元会社員・男性)
出会ったきっかけ
ダイビングライセンス講習を終えた日の翌日、月曜日のことである。
学校へと向かうジプニー内で待っていると、隣に座る初対面のイケメンに話しかけられ、「休日に何して遊んだか」という話になった。
そのイケメンがカミヤマさんである。
「ダイビングをして死ぬほど楽しかった」と言ったところ、つい昨日までモアルボアルというリゾート地でダイビングをしてきたというカミヤマさんと一瞬で意気投合した。
ダイビングの面白さについて熱く語り合い、来週一緒にモアルボアルに行こうという約束まで結んだ。
ちなみに死ぬほどどうでもいい話だがダイビングの話で盛り上がっている際に40代の方(Eさん)も話に参加してこられて、
Eさん「俺も少し前にCカード(OWD)取ってもう9本潜ったよ」
ぼく 「すごいですね、9本ですか!」
Eさん 「昨日は29メートル潜って沈没船内にも入ったよ(笑)」
カミヤマさん「いやダメですよOWDなんだからww」
ぼく 「アドヴァンスドでもギリギリですよww」
カミヤマさん「しかも沈没船とかダイブマスターのレベルですってwww」
と専門用語の会話が出来て「ああ自分もうダイバーですわ」と一人悦に浸れてとても楽しかったです何でもないです。
どんな人?
カミヤマさんは20代中盤の方で、「作り笑いが嫌になった」という理由で4年間勤めていた会社を辞め、この夏セブ語学留学に来たという。
とにかく英語力が高く、現地の人ともかなり早い速度での会話を難なくこなす英語のスペシャリストだった。
そのうえ人柄がよく底抜けに明るく話が面白いので、あちこちに現地の知り合いがいた。
個人で事業を営んでおり、Web系が絡んだ仕事なので働く場所に制限がなく、世界を渡り歩きながら生きていけるというまさに完璧超人の自由人である。
実際この留学が終わった後、日本に帰国してすぐオーストラリアに行ったという。
それまでぼくが実際に会ってきた日本の「大人」というのは、毎日朝から晩まで働き、会社に縛られ家族を顧みることもできず、不条理なシステムや制度に憤りつつも我慢して生きていくことが大事――という信念を体現するような人ばかりだった。
実際、多くの「大人」に「立派な社会人になれ」「大企業に入れ」「公務員なら一生安泰」ということを度々言われてきた。
そのたびに何か息苦しさのようなものを感じていた。
しかし、カミヤマさんという「しっかり自活しつつ毎日を全力で楽しんで生きることが出来る」モデルケースがとつぜん目の前に現れた。
日本の固定観念や古い価値観に縛られない新鮮な風を纏い颯爽登場したカミヤマさんとの出会いは、大雑把で開放感に満ちあふれた南国フィリピンの雰囲気も手伝って、ぼくの人生観に大きな影響を与えた。
具体的に言うと、カミヤマさんみたいになりたいと思ったぼくは帰国後に色々と試行錯誤を始めた。
今では彼と同じような自由を手に入れつつある。
カミヤマさんに出会わなければ今のぼくはなかっただろう。
人生を変える出会い。
まさにそう言っていい。
セブには、それがあるのだ。
コウノくん(20代・大学生・男性)
出会ったきっかけ
詳しくは後の回で書くが、ぼくは帰国一週間前に重大なトラブルに見舞われた。
下手を打つと帰国不可能になる程のトラブルだった。
それが発覚したのは学校から寮へと帰るジプニー内であり、あせったぼくは周りの人に解決策を尋ねまくった。
その時に仲良くなったのである。
何がきっかけになるか分からないものだなと思う。
どんな人?
一言で言うとチャラい。
話し方もどことなく軽薄だし、やや苦手な部類である。
第一印象は「テニスサークルによくいる大学1年生」だった。
だが、知り合った夜に一緒にカレーを食べながら話してみると、中身は驚くほど真面目であることが判明した。
彼は大学を1年間休学し、農業を学ぶため農村ボランティアに行ったり各種農業技術の最新動向を追うため企業を訪問したり第一人者と会ったりとぼくなんかより遥かに有意義な大学生活を送っていた。
現在は外資系の農業機器販売会社・開発企業等、複数社から内定のオファーが来ているという。
日本の窮屈さ・前ならえの風潮に常日頃から息苦しさを感じ、「まだ自分は日本しか知らないから、これから日本国外に活動の幅を広げ見識を深めたい。その上で、いずれ俺がこの日本を変える」と熱く語るその様は、ゴミのような大学生活を送ってきたぼくが直視するには眩しすぎる姿だった。
すごい。
尊敬した。
同年代なのにこの差は何なのだろう。
アルコールも入っていたので、話はますます盛り上がる。
しかし大学生活で色々成し遂げてきた彼と違い、ぼくの方は実績は何もないため言葉に説得力を持たせられない。
自分は3年半もの間、何をしてきたのだろう。
悔しさと恥ずかしさで穴にこもりたくなる。
しかしそんな事を気に留める様子もなく、コウノくんは話を盛り上げてくれる。
優しさに震えた。
自分より遥かに素晴らしい人と出会える。
そんな人が普通に居る。
やはり語学留学の素晴らしさは、「出会い」にあるとぼくは思う。
シマザキくん(10代・大学生・男性)
出会ったきっかけ
3人部屋の同居人である彼は、フクモトさんが帰国したのと入れ替わりで入ってきた。
こうしてみると、やはり複数人部屋だと圧倒的に色々な人と出会えると感じる。
どんな人?
一言で言うとチャラい。
最後まで間違いなく圧倒的にチャラかった。
しかし英語に関しては誰よりも真摯に取り組み、朝早いのに夜遅く(夜中の2時)まで勉強するのが日課だった。
その姿を見て、寝ようとしたぼくは思い直してたびたび机に向かった。
ともすればダラけてしまう語学留学においてぼくが高いモチベーションを発揮できたのは、ひとえに彼のおかげである。
また、仲の良い人が皆帰国してしまった後、一人で食事をとっていたぼくを気にかけて何かと多人数の食事に誘ってくれたのも彼だった。
そのおかげで、彼を通じての友人が幾人もできた。
なかでもぼくが帰国する最終日に開催される「歌コンテスト」に誘ってくれたことは、あらゆる意味で感謝している。
詳細はやはり後の回で述べるが、彼との出会いはカミヤマさんとの出会いと同じくらい意義深いものになった。
紛れもなく、出会えてよかった人物の一人である。
語学留学と、出会い
留学前は「英語力の向上」と「セブでの遊び」しか頭になかった。
まさか人生を変えるほどの出会いがいくつも待っているなんて、思いもしなかった。
何度も繰り返すが、語学留学に来る人は皆どこか変わっていて、面白くて、魅力的な人たちばかりである。
何かしらの意志を持って日本の外に飛び出し、不慣れな土地で不慣れな言語を学んでいくというバイタリティに満ちた人たち。
誰もが、目に力を持っている。
誰しもが、エネルギーにあふれている。
背を丸め地面を見つめてとぼとぼと歩くような人はいない。
みな活気に満ちて今日も元気に寮を飛び出していく。
一緒にいるだけでワクワクするようなスゴい人たち。
語学留学で出会えるのは、そんな人たちなのである。