実際に語学留学してみると、いろいろなことが分かってくる。
日本人ならばまず受けるべき授業。
フィリピン英語と実際の英語の違い。
実用英語と学校英語のギャップ。
「現地に行く前に知っておきたかった」という事実をいくつか紹介していこう。
簡単な短文が好まれる
実際に英語を話しながらフィリピンで暮らし、フィリピン人講師と英会話レッスンを重ねていくうちに気づいた。
どうやら、英会話に長い文章は必要ないようだ。
自己紹介ひとつとっても、
“Would you please let me introduce myself..”
と長々と語りだすより、サクッと
“I’m Taro.”
で終えてしまった方がいい。
その方が絶対にいい。
会話はスピードが何よりも大事である。
3分かけて文法的に完璧に正しい完全な文をひねり出していたのでは、もはや「会話」ではない。
とにかく短い時間で、伝えたいことをなるべく簡単な英語で伝えることが重要だ。
文法的に間違いがあってもいい。
とにかくカンタンな英語で、なるべく短い文で、出来るだけ早くパッと口から出すことが大切である。
それを繰り返すことで、ネイティブと流れるような会話が可能になる真の英会話力が備わる何よりのトレーニングとなる。
難しい文は通じない
ビジネス英語の授業中のことである。
講師に「週末はどうだった?」と聞かれたので、「ダイビングをしてきたよ。海の美しさに驚かされた(“That the sea is beautiful surprised me.”)」と言ったところ、「はは、その英語は間違っているよ」と言われた。
That the sea is beautiful surprised me.
はて。どこか間違ったところはあっただろうか。
That節が名詞節となって、
[That the sea is beautiful] surprised me.
ときちんとした英文になる。
間違いはないはずだ。
すると彼は「一文中に動詞が2回も出てくるのはおかしい」と言った。
試しに他の講師2人にも聞いてみたが、やはりこの英文は”間違っている”という。
もしかして、彼らはThat節が名詞節になって主語や補語になることを知らないのでは?
日本で学んできた英語の中ではかなり初歩的な知識だっただけに、かなりのショックを受けた。
なぜ、こんな初歩的な文法知識を彼らは知らないのだろう?
そして気づいた。
フィリピン人が文法知識に疎いのではない。
日本人が文法知識に詳しすぎるのだ。
日本の英語教育で、我々日本人は複雑かつ膨大な文法知識を教えこまれた。
しかしそのほとんどはふと格式高い論文や難解な文章にしか登場しないものであり、日常会話にはほとんど使われない。
コミュニケーションとしての英語には、あれほど日本で重要とされてきた文法知識が9割以上不要となる。
不要どころか、逆効果だ。
たしかに、”That the sea is beautiful surprised me.”なんて文を口頭で述べられたら「ん?」となるだろう。
一度聞いただけでは分からないような文は、英会話では好まれない。
好まれないどころか、そもそも通じない。
日本の英語教育で学ぶような複雑な文法知識は、そもそも知らない人が圧倒的に多いのだ。
日本で学んだ”高度な”英文法は日本の試験科目でしか活用できない。
それに気づいたぼくは、その日のうちに速やかに上級文法書を投げ捨てた。
ショートフレーズの重要性
個人的に一番悔しい思いをしたのが、シンプルな英語が言えないということだった。
「それはスゴいな」
「こっちの台詞だよ(笑)」
「しかたないさ」
「まぁね」
「遠慮しておく」
「同感!」
……こうした表現のレパートリーが、ぼくの脳内には皆無だった。
当然と言えば当然である。
それまでのぼくの英語勉強は「大学受験」「TOEIC」に特化たものだった。
「日常でよく使うシンプルな英語」なんて知っているはずがない。
講師の人と会話をしていた思ったのだが、英会話が上手な人ほどショートフレーズを多用する。
「英単語2~3語の短いフレーズ」は英会話において驚くほど効果的である。
帰国後、『英会話ショートフレーズ使える1000』という本を購入して勉強したところ、「ああこのフレーズ使ってた!」と感激の連続であった。
「英会話頻出表現」という名のついた本は多く出ているが、単語6語以上の長大なフレーズによって構成されている例文がほとんどだ。
そんなに長く複雑なフレーズは覚えにくいし、そもそも頻出しない。
実際の英会話で頻出する表現は、3単語以内の極めて短くシンプルなフレーズである。
聞く方も人間なので、シンプルでわかりやすい表現が好まれるのは当たり前だ。
補足までに、以下の本はシンプルなショートフレーズを扱った超おすすめの参考書である。
フィリピン訛りの英語発音
フィリピンでは英語が第二公用語であり、日本人に比べると英語が話せるフィリピン人は圧倒的に多い。
しかしそれでも完全な母国語というわけではないので、人によっては訛(なま)りが発生する。
有名なところを挙げると、フィリピン人にとってはPとFの発音が困難である。
ぼくのマンツーマンレッスン講師の中にも、flower(フラワー)をプラワーと発音する人がいた。
日本人の多くがRとLの違いがわからず発音し分けられないように、フィリピン人の多くもPとFの違いがわからず発音し分けられないのだ。
とは言え、フィリピン訛りの英語を話す講師に当たったからといって悩む必要は無い。
日本訛りの英語に比べれば遥かにネイティブに近い英語だからである。
よほど訛りが強烈な人にあたったら担当を替わってもらうこともできる。
そもそも語学学校の講師をする人たちなので、質の高い英語を話す人がほとんどだ。
一応「フィリピン訛りが強い英語を話す講師がいるかもしれない」とだけ覚えておこう。
Pronunciation(発音)の授業を受けよう
「語学留学でやるべきたった一つのことは何か」と聞かれたら、ぼくは間違いなく「発音の勉強」と言うだろう。
発音の授業は絶対に受けよう。
発音の授業さえ受ければあとは遊んでいいと言っても過言ではない。
詳しくは別記事「日本人の英語力に不足しているたった一つのスキル」で述べるが、日本人は発音をカンペキにするだけで驚くほど話せるようになる。
学校教育で複雑かつ膨大な英文法・英単語の知識を蓄えた我々が話せない理由は、「発音の不勉強」のみにあると言っていい。
実際ぼくは、発音しか勉強しなかったのに初対面の日本人から「めちゃくちゃ英語上手いですね」と言われるようになった。
きちんと発音できれば、自分の英語が相手に通じる。
きちんと発音できれば、相手の英語も耳で聞き取れる。
発音とは、英会話を行うために絶対不可欠なスキルなのだ。
おそらく多くの日本人の方は、発音をきちんと勉強するだけで英会話をかなりのレベルで行えるようになる。
新しいフレーズや頻出表現など全く学ばなくとも、手持ちの英語知識だけで十分に英会話は行える。
本当に発音は重要なスキルなのだ。
対面で発音を教わるのは最高に効果的な勉強法だ。
口の動き、下の位置、喉の開き方、逐一確認しながらマンツーマンレッスンで教えてもらおう。
ちなみにぼくは、日本人が苦手とするRとLの発音を3時間かけてレッスンした。
苦労したが、おかげで今ではほぼ完璧にRとLを発音できるようになった。
既に多くの英語知識を備えている日本人にとって、一番力を入れて勉強すべきは発音である。
それさえカンペキにすれば英会話は難しくない。
語学留学では、絶対にPronunciation(発音)の授業を受けるようにしよう。