セブ語学留学体験記vol.20 クレイジーダンス

セブ語学留学生活も3週目が終わった。

いよいよ残すところあと一週間。

週末はどこに行こうか。
そう悩んでいたら、セブでできたフィリピン人の友人Tonyに誘われてバーに行くことになった。

夜のメインストリート。

怖い。

Mango Avenueへ

語学学校の友人コウノくんと21時に出かける。
3週間ずっとサンダル生活だったので、ジーパンに靴をはくと妙な感触だ。

タクシーに乗ってセブ有数の繁華街”Mango Avenue”へ向かう。
途中、人気のない暗い道路を通過したときは殺されるかと壮絶に恐怖したが、そんなことはなかった。

無事、待ち合わせ場所に到着。

しかし約束の時間になってもTonyの姿が見えない。

電話したところ「今から家を出る」とのこと。

南国特有の時差だと思おう。

海外のバー

3人で行ったのはBar「yo.u」。

店内は暗めで、ライトも控えめ。
なんかバンドが機材の準備をしている。
オシャレ。
こんなバー、一人では一生来れなかっただろう。

入り口近くのテーブルに座ってSan MiguelやRed Horseを飲み始める。

バンドの演奏が始まった。

「Boogie Wonderland」
「Turn Me On」
「Where Have You Been」
「Super Bass」……。

世界的に有名な洋楽のレパートリー。
開始して30分ですでに店内の盛り上がりはすごいことに。

ダイブイン

2組目のバンドが演奏をスタートしてすぐ、語学学校のフィリピン人スタッフの男女2人組が立ち上がったのを見かけた。
バンドが演奏している前の開けたスペースへと進む。

あ、いらっしゃったんですね。

と思う間も無く、音楽に合わせて踊り始めた。

な、なんだと……?

衆人の目が集まる場所でロマンチックなダンスに興じる2人。

これが海外か……。
ぼくだったら目立つのが怖くて恥ずかしいから絶対にムリだ。
すごいところに来たなあ。

これは自慢できるな。
良い経験だ。

とか思ってたら、ほどよくできあがってたTonyとコウノくんが「よっしゃ俺らも行こうぜ!」と酒のビンを持って突撃した。

踊り狂う4人。

“C’mon!!”
「お前も来いよ!」

次第に演奏の音量が上がり熱を帯びて行く店内で、2人がぼくに向かってそう叫ぶ。

行きたい。

だが、まだ恥ずかしさが勝ってしまう。

語学学校つながりの彼ら彼女ら4人以外の人たちは、自分の席で微笑ましく見守っているだけだ。

たまに口笛とか吹いたり”Foo!”とか”Yeah!!”とか盛り上げてくれるけど、誰も前には行ってくれない。

行きたい。
でも、行ったら目立つ。
あああどうしよーーーー。

音量が上がる。

フロアで踊っているコウノくんとTonyがこっちに向かって何か叫んでいる。

行きたい。

むしろ……行かないといけないのでは?

何のためにセブに来た?

ゴミのような大学生活を送って、就活に失敗して、後悔して懺悔して、それでも何とか前向きに自分を変えたかったから来たのだろう?

ここで愛想笑いして座ったままで、あとで「いや酔っててさ」とテキトーにごまかしてタクシーで帰って寝て何も変わらない明日を迎えることもできる。

でも、そういうのはもう、いやだ。

逃げるな。

度胸のなさを慎重と言い換えるな。

行け。

行くしかない。

自分を変えるんだ。

この夜に飛び込むしかない!

San Miguelのビンを片手に、フロアに特攻する。

腕を振り上げたり、ステップを踏んだり飛び跳ねたり。

ダンスってどう踊ればいいんだ?

スマートでゴキゲンなやり方なんて何もわからない。

これで正しいのかも全く知らない。

とにかく本当に何も分からない。

でも、楽しく踊れば良いということだけは分かる。

中途半端に、恥ずかしがってちゃダメなんだ。

見てる人も、一緒に踊ってる人もテンションが上がるように。

とにかくバカバカしく、楽しく、リズムにのって踊ればいいんだ!

たぶん!!

踊っている4人は極上の笑顔で迎えてくれた。

コウノくんが「マジで来てくれるとは思いませんでした!」と超笑顔で叫ぶ。

曲はノリ重視のクラブ的なものに変わっていく。

熱い。

うるさい。

アルコールが回る。

熱い。

止まったら死ぬ。

踊れ!!!

しばらくぼくら5人だけで踊っていた。

次第に席から立ち上がって、地元のフィリピン人や外国人観光客たちがフロアに進んできてくれた。

狭くなるスペース。

初めて会った人たちと、超至近距離で、一緒に踊り狂っっていた。

クレイジーダンス

めちゃくちゃ美人でスタイルの良いバンドのボーカルの人と写真撮影しまくったり、

だいぶ飲んでる赤いシャツを来た大柄の欧米系の男性と相対して腕交差して互いの杯を飲みほす「ベン・ハー」式の乾杯をやったりその人とゼロ距離で超大声で話し合ってもバンドの音がうるさすぎてオランダから来たってこと以外何言ってるのかわからないけどなんか爆笑しあえたり、

いろいろ写真撮りまくってたので店員の人たちもノリよく勢いでフレームに入ってくるので一緒に記念撮影したり、

なんか目立つ場所でアジア系のおじさんが目立つ踊りを始めたので「行って来いよ」みたいな感じで初対面の人に背中を押されしばらくおじさんと1on1で激しく乱舞したり、

ちょっと休憩と思って席に戻ったら「いいダンスだ!」って言ってくれて周りの席の初対面の人たちがお酒や料理を注文しておごってくれたり、

最後の方は本当に人がひしめく爆音の中みんなで拳を突き上げて飛び跳ねて叫んだり、

あらゆるすべてが非日常だった。

セブに来てよかったと、汗だくになってうつろな意識の中、ぼんやり感じた。