問題
少女は動いている上りエスカレーターに乗りながら、ゆっくり歩いて上った。
上の階に到着するまで50段を歩いた。
次に少女は同じエスカレーターを全力で逆走して、下の階に戻った。
下の階に到着するまで125段を歩いた。
少女がエスカレーターを逆走する速さは、上る時に歩く速さの5倍だった。
すなわち「1段上がる時間」と「5段下りる時間」は同じである。
さて、エスカレーターが止まっている時、エスカレーターは下の階から上の階まで何段あるだろうか?
さあ、解いてみよう!
簡単そうに見えますが、実際にはわりと数学的な分析能力が要求されます。
ヒントはなし。
少し下にスクロールすると答えがあります。
正解
100段
解説
方針
分かりそうで分からない問題です。
少女が移動する時、少女が歩いた段数は「エスカレーター本来の段数分」に「エスカレーターが運ぶ段数分」「押し戻す段数分」が密接に関わります。
それを求めるのに必要なのは「エスカレーターの速さ」の値。
しかし問題文中では記述されていません。
確実に判明しているのは「少女が歩いた段数」と「少女は5倍のスピードで逆走した」ということのみ。
そして分からないのは「エスカレーターの段数」「エスカレーターの速さ」の2つ。
ゆっくり上った時と、全力で逆走した時。
状況は2パターン。
わかっていない数字(未知数)は2つ。
……2つの状況と、2つの未知数。
中学数学が役に立つ時がきました。
連立方程式の登場です。
2つの式
連立方程式とは。
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
x + y = 10 \\
2x + 4y = 32
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}
こんな感じのアレです。
ものすごく乱暴に言うと
たとえば
5 = 2 + A
っていう式がある時、Aは3だ!
すげえ!
って感じの。
考えるな。
感じろ。
数学はフィーリング。
未知数から関係を作ろう
「よくわからない数」があっても、とにかく式を作っちゃえばどうにかなると分かりました。
とりあえず未知数を設定しましょう。
v = エスカレーターが上る速さ
はい。
この問題はLを求めるのが最終目的です。
なので、Lとvが登場する式を2つ作ってvをこの世から消し去ればおのずとLが残ります。
がんばりましょう。
さて、少女自身が上ったり下がったりする具体的な速さについては記述がありません。
また、エスカレーターの具体的な速さについても何も書かれていません。
両者はまったくの別物ですが、少女が階から階へ移動する「時間」に関しては同じものが適用できるはずです。
この問題に関係しているのは、少女が階から階へと移動したそのプロセスですから。
なので、少女が1段歩いて上がる「時間」をすべての基準にします。
単位となるこの時間を「単位時間」と定義……すると用語が分かりにくいので、さしあたり「1秒」としましょう(※「1分」とか「1時間」でも構いません)
v = エスカレーターが上る速さ(段/1秒)
少女は、1秒で1段、エスカレーターを歩いて上る
それでは1秒の間に何が起こっているのかを考えていきます。
上りの場合
まず、少女が上りエスカレーターに乗って優雅に上っていった場合。
このとき、少女は50段を上がりました。
少女は、1秒で1段、エスカレーターを歩いて上る。
すなわち少女が移動にかかった時間は50秒。
少女が歩いて上がった50という段数は、
で表されます。
元々のエスカレーターの段数分はL段
エスカレーターが運んでくれた段数分は(50秒 × v)段
ここから、少女がエスカレーターを普通に上った時の状況を式にすると
になります。
下りの場合
つづいて、少女が上りエスカレーターを全力ダッシュで逆走して下っていった場合。
このとき、少女は125段を駆け下りました。
少女は、1秒で1段、エスカレーターを歩いて上る。
ならば1秒で5段、エスカレーターをダッシュでダウン。
125 ÷ 5 = 25
少女が移動にかかった時間は25秒。
そして少女が己の限界に挑戦した125という段数は、
で表されます。
元々のエスカレーターの段数分はL段
エスカレーターに押し戻された段数分は(25秒 × v)段
ここから、少女がエスカレーターを逆流した時の状況を式にすると
になります。
連立方程式
これで2つの式が得られました。
\begin{eqnarray}
\begin{cases}
L段 – (50秒 × v) = 50段 & (1)\\
L段 + (25秒 × v) = 125段 & (2)
\end{cases}
\end{eqnarray}
ちょっと分かりやすくしましょう。
\begin{eqnarray}
\begin{cases}
L – 50v = 50 & (1)\\
L + 25v = 125 & (2)
\end{cases}
\end{eqnarray}
あとはこれを解くだけです。
(2)を2倍にして、それを(1)と合計し、vを撃滅します。
\begin{eqnarray}
\begin{cases}
L – 50v = 50 & (1)\\
2L + 50v = 250 & (2)
\end{cases}
\end{eqnarray}
より、
(L + 2L) + ( -50v + 50v) = (50 + 250)
3L = 300
L = 100
ようやく解けました。
エスカレーター本来の段数は、100段です。
まとめ
「まさか解けるとは思わなかった」
「まさか中学数学が役に立つとは思わなかった」
無味乾燥だったあの頃の数学の知識が、現実でこんなにも役に立つのですから数学って面白いですね!
ね!!!!!!!!!
参考
Solution to Puzzle #36: Professor on the Escalator