チュートリアル 英文翻訳調の文章の書き方(再配布版)

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元記事:チュートリアル 英文翻訳調の文章の書き方
インターネットアーカイブ:チュートリアル 英文翻訳調の文章の書き方

第1章 導入–どうして英文翻訳調を?

1-1:英文翻訳調の世界へようこそ!

この文書は英文翻訳調の文章を書くための最も基本的なチュートリアルです。

あなたはこの文書を通読することで英文翻訳調の文章を自由に書くことが出来るようになるでしょう。
また、あなたが既にある程度英文翻訳調について精通しているならば、この文書はあなたの知識の整理の手助けになるでしょう。

英文翻訳調は難しいものではありません。

この文体はシンプルかつパワフルで、刺激に満ち溢れています。
あなたは英文翻訳調を知れば知るほど、この文体の有効性がよく分かるでしょう。

それでは英文翻訳調の世界へと旅立ちましょう。

1-2:英文翻訳調とは何か?

英文翻訳調とは、英語の文章を翻訳した日本語の文章が持つ特徴を共有する日本語の文体です。この文体の豊富なサンプルはインターネット上で手に入れることが出来ます。
この文章もいくつかのサンプルをあなたに提供するでしょう。

あなたは英文翻訳調をマスターすることで次のような利点を得ることが出来ます。
それらはすなわち

1.文章の論理性の向上
2.あなたの日本語の翻訳の容易化

また、英文翻訳調が持つ特別な雰囲気も忘れてはいけません。あなたは日本語に変化を付けるだけの目的に英文翻訳調を使うことができます。

これらの特徴から、英文翻訳調は技術的な文章への親和性が高いです。

あなたの文章が翻訳を前提にするならば今すぐ英文翻訳調で書くべきです!
た、あなたが何かの開発者であるならば、あなたはあなたの子どもに添付する文書を英文翻訳調にすることで、ユーザーにあなたの仕事が世界を相手にしていると思わせることが期待できます。
このことはあなたの顧客のあなたに対する信頼の向上に貢献するでしょう。

しかし英文翻訳調を用いるべきではない場合が存在します。
それらは実際には個別的な問題なのですべてを挙げることは出来ませんが、いくつかの例を次に挙げます。

1.小説などの物語文:この種類の文章では英文翻訳調の硬さが表現を制限する恐れがあります。
2.歌や詩などの韻文:上に同じです。しかし特別の効果を得るために英文翻訳調を用いることは悪い考えではありません。
3.日記文など:英文翻訳調は叙情には不向きです。ただしあなたは純粋な記録としての日記に英文翻訳調を用いることが出来ます。
4.日本の一般大衆向けの文書:人々の多くは英文翻訳調に慣れ親しんでいないため、彼らはその文書に疎外感を感じるでしょう。

これらのいずれかに当てはまる場合は一般に英文翻訳調を用いることは適切な判断ではありません。
しかしすべての状況でこの文体はオプションです。
あなたにはこれを使うことを、あるいは使わないことを選択する自由が与えられています。

第2章 英文翻訳調のミクロな技術

2-1:導入

この章では文単位での英文翻訳調を詳しく説明します。

この章を読むことであなたは英文翻訳調について理解し、それを用いた文章を書くことが出来るようになるでしょう。

あなたがそれほど大きな文書を書かない場合はこの章を読めば十分です。
しかしある程度大規模な文書を作成する必要がある場合は別のレベルの技術が必要になります、それらについては第3章で説明します。

2-2:英文翻訳調で書くための最も単純な技術

あなたが英文翻訳調で文章を書くときに用いることが出来る最も単純な方法は、あなたの日本語の文章をまず英語に翻訳し、その英文を逐語訳することです。

この時に高度な翻訳は求められません。
求められるのは中学生レベルの英文です。
また、単語もより平易な語に置き換える必要はありません。

この方法は完全ではありませんが、ある程度のレベルで英文翻訳調を実現します。
しかし英文翻訳調の利点の一つである「翻訳の容易化」が得られず、また二度の翻訳は非常に時間と気力を消費する作業でしょう。

そこで今度は直接英文翻訳調で書くための技術を見ましょう。

2-3:主語の明示と人称代名詞の多用

あなたが英語を学習したことがあるならば、あなたは英語が主語を原則的に明示する言語であることを知っているでしょう。

日本語は違います。
主語を言わなくてもそれが予想できるだろうことが期待されるならば、日本語は主語を省略します。

このことが導く結論は、英語の文書を日本語に翻訳した文書は日本語で生まれた日本語よりも主語が多く現れると言うことです。
翻訳された文書は翻訳者が主語を隠す努力をしないならば例外的に主語が省略されます。
したがってあなたが英文翻訳調で文書を書くときにはあなたは主語を明示する努力が必要です。

主語を省略しないで文書を書いているとあなたは人称代名詞を用いる衝動に駆られるでしょう。
そうです、固有名詞は、それを必ず書かなければならないとしたら、多くの場合冗長です。

また、あなたは個別的ではない人々–そしてそれゆえに固有名詞を使えない人々–に対して文書を書く必要に直面するでしょう。
英語はこれらの問題のためにI, we, you, he, she, theyなどのような(人称)代名詞を多用します。
これは英文翻訳調にも反映されます。

もちろんあなたが主語の多い日本語を鬱陶しく感じるときはそれらを省略することも出来ます。
ひとたびあなたが主語を明示することに決めたならばあなたはそれらが単調になるように気を遣う必要があります。

日本語は豊富な人称代名詞を持っていますが、あなたはこれらを一定の記述に統一するべきです。

その記述の一覧表は:

人称 単数 複数
一人称 「私」 「私たち」
二人称 「あなた」 「あなたたち」
三人称 「彼」「彼女」 「彼ら」「彼女たち」

あなたは他の単語を用いたいと思うかもしれません。
下のサンプルのようにそれらを用いて翻訳調の雰囲気を表現することは可能です。

「俺もクソ野郎だがお前はもっとクソ野郎だ。」

という一文は非常にアメリカ的です。
この例はハリウッド翻訳調と呼ばれる英文翻訳調の変形です。

しかしながらこうした変形はあまり一般的ではありません。
なぜならこれらは非常に応用的で難解な理論を必要とし、また英文翻訳調の変種の多くは口語的であるためです。

2-4:文末の「です/ます」調への統一

あなたは日本語の文書を書く多くの場合にその文末に2つの選択肢を考えるでしょう。
一つは「です/ます」調で、もう一つは「だ/である」調です。

英文翻訳調はあなたが文末を「です/ます」に統一することを推奨します。
あなたが英文翻訳調を用いる多くの場合であなたに必要なことは読み手に通告することでなく納得させることです。
こうした目的でより丁寧な方を用いることは正しい選択でしょう。

しかしながら「る/らる」調の方がより適切な場合が存在します。
あなたが純粋に説明のための文書に英文翻訳調を用いるとしたらそのようなときはより定義的な表現である「る/らる」の方が適しているといえます。

2-5:英語の助動詞に由来する表現

英語は内容の細かな差異を表現する優れた手段として助動詞を開発しました。
それは動詞の前に置かれるものです。
それは日本語に翻訳されるときに大抵は動詞の後ろ–そこは多くの場合は文末になります–に置かれます。
あなたは助動詞に対応する日本語を英文翻訳調の文末に置くことが出来ます。

例えば:

あなたはこのサンプルを無視することができます(can)。
その場合もあなたは同様の表現をこの文章のなかで見つけるでしょう(will)。
こう書くとあなたはこのサンプルの意義を疑うかもしれません(may)。
それでも私はこのサンプルを書かなければなりません(must)。
私たちは注意深くない人も気付くように気を配るべきです(should)。

助動詞に加えて、英語では一定の動詞と前置詞の組み合わせが同様に働きます。
あなたが日頃から英語に慣れ親しんでいるならば、あなたはそれらを英文翻訳調に反映させることができるでしょう。
あなたが英語を頭痛の種と考えていても悲観する必要はありません。
あなたはその繊細な感覚を文末に傾けるだけで十分に英文翻訳調の書き手になることができます。

2-6:修飾節の配置

英語は関係代名詞などを用いて、ある単語を後ろから修飾することができます。
一方日本語は通常前から修飾します。

この違いは「訳し上げ」と呼ばれる翻訳上の技術を生みました。
訳し上げとは翻訳するときに英文では後ろに記述された節を日本語では前に書く技法です。

日本語は主文の動詞を最後に置くため、あなたは理解しやすい文章を書くために無意識のうちに一文の長さを制限しているでしょう。
しかし英語では普通、修飾される機会が多い目的語と補語が動詞の後ろに置かれ、そしてそれらは後ろに節を伴うことで修飾することができる(そして節の中の目的語・補語についても同様である)ため、あなたは文を必要ならばどこまでも続けることができ、実際に日本語より頻繁にそのような長い文を見ます。

このことは「訳し上げ」られた文が普通の日本語の文よりもより長く、より複雑になりがちなことを意味します。

英文翻訳調は「訳し上げ」を再現します。
あなたは訳し上げを再現するための適切な手続きを取ることができます。

  1. まずあなたは簡単な形で主文を書きます。単語レベルの修飾語はこのときに記述できます。
  2. 1の文の理由・目的・対象や単語のより詳しい内容などの、1で書いた文に追加すべき内容を1の文の下に書き、挿入するべき位置を矢印で指します。単語を修飾する場合は単語に結びます。
  3. 追加の内容に対して、2の手続きを行います。この手続きは任意の回数繰り返されます。
  4. 上の位置にある文を書き写します。矢印に出会ったらその根本の文を書き写します。つまり、矢印に会うごとに一つ下の階層に降り、その階層が書き終わると上の階層に戻ります。

この手続きの実例は:

神は死んだ。
↑ ↑
|豆腐の角に頭をぶつけて
| ↑    ↑
| |  バーコードに禿げた
|商店街の老舗豆腐屋主人手作りの
人々に崇められなくなった

→人々に崇められなくなった神は商店街の老舗豆腐屋主人手作りの豆腐の角にバーコードに禿げた頭をぶつけて死んだ。

この方法はあなたが手間をかけることが許されるならば極めて有効でしょう。
しかしこれは二回書くための時間と空間を要求します。

この問題を解決するためにあなたが取ることができる手段の一つはこの処理を頭の中で行うことですが、それを容易にするためにあなたは新しい別の手段を導入することができます。
それは「訳し下ろし」と呼ばれます。

この方法をとった場合の上の例は:

人々に崇められなくなった神は死んだ。
商店街の老舗豆腐屋主人手作りの豆腐の角にバーコードに禿げた頭をぶつけたためである。

この方法の利点は、文を分けることで一度に処理する内容が減ることと英語の発想に近い文構造になることです。
「訳し下ろし」の具体的な技術は、訳し上げで単語を直接に修飾しない節–換言すれば理由・目的など–を文を閉じたあとに独立して書くことです。

ところでこの文書がこの節で説明した技法は厳密に適用するにはあまりに厄介です。
実際にはこれらの処理は無意識により厳格でない形で実現されます。

2-7:有名構文の使用

あなたが英語を学習したことがあるならば、あなたは定式化されたいくつかの英語の表現を知っているはずです。
それらの日本語訳を適切に用いることは英文翻訳調についてのみならず、あなたの日本語全般をより豊かにすることにも有益です。

こうした英語の言い回しはしばしば「有名構文」と呼ばれます。
有名構文の数は多く、ここですべてを取り上げることは不可能かつ不適切です。
この文書ではいくつかの代表的なものだけを紹介します。

AばかりではなくB (not only A but also B)
 この構文はAとBの2つの要素を並立します。
 多くの場合AはBより当たり前で小さな要素で、Bの方が強調されます。
 このことは新情報を後ろに置きたがる英語の性質に合致します。この構文はAとBに単語ばかりではなく節も取ることができます。

AであればあるほどB (the more A, themore B)
 この構文ではBはAに付随します。英語ではmore A、more Bは比較級の形容詞で置換することができます。
 しかしこの表現の多用はその文章を見苦しくします。
 あなたは特に強調したいところでのみこれを用いるべきです。
 これを使う欲求を我慢すればするほど、それを使った箇所がより印象的になるでしょう。

これら以外の表現もあなたが知っているものを英文翻訳調に用いることができます。
ティーン向けの英語の学習参考書はこうした表現の宝庫です。
こうした書籍は英語の学習と同じくらい日本語の学習に有益です。

2-8:形容詞の語彙

英語の世界では同じ表現を繰り返す文はあまり美しいと見なされません。
あなたが英文翻訳調として優雅な文章を書きたいならば、同じ内容を別の書き方に言い換えることを推奨します。
形容詞はこの問題が頻出するものの一つです。
多くの形容詞を用意することはあなたの日本語全般をより素晴らしいものにし、特に英文翻訳調としてより上等な文章力を提供するでしょう。

語彙の拡張には日頃の訓練が必要です。
スポーツの実況がこの目的の参考になるかもしれません。
彼らは一人の投手の投球を、力強く、ダイナミックで、迫力のある、重くて、伸びのある、切れ味を持ったものとして捉えます。
一つの事象を多くの言葉で表すには細やかな想像力が求められます。
こうした気配りは日常生活の注意が伸長させるでしょう。

これらのことは英語圏の人々が感受性豊かな生活を送っていることを意味しません。
英語の形容詞はその他の品詞に特定の接尾語を付けることで容易に拡張されます。
この理由から、あなたは思いもよらない形容詞を頻繁に見つけるでしょう。
この現象を英文翻訳調に導入するとき、あなたは日本語の名詞や動詞のあとに「的」を付けることができます。
実際に、この方法はあなたがとりうる最も簡単で柔軟な方法です。

2-9:日本語にはない記号–ダッシュ、コロン、セミコロン

英語にはいくつかの日本語にはない記号があります。
そのうちのいくつかは日本語に導入されましたが、その他のいくつかはそうではありません。
括弧は前者の代表です。
後者の記号–ダッシュ、コロン、セミコロン–の意味を日本語に導入する方法は英文翻訳調の重要なトピックです。

ダッシュは3つの中で最も日本語で地位を確立している記号です。
この記号はいくつかの働きを持ちます。
それはそれ自身の後ろを強調し、あるいはそれ自身を総括します。
ダッシュを2度用いることで括弧の代わりに用いることができます。
このように用いられたダッシュは翻訳せずにそのまま日本語に挿入され得ます。
それは最近では日本語で書かれた文章にも見られるようになりました。
これを用いるかどうかは今では書き手の好み次第です。
英文翻訳調でダッシュを積極的に用いることはよい結果を導くでしょう。

それに対しコロンやセミコロンは日本語に定着していません。
従ってあなたは英文翻訳調でも無理にこれらを用いる必要はありません。
しかしこれらの存在がもたらす表現の傾向を知ることは損ではありません。
コロンは例えば例示やリスト表記を文に続けるために便利に用いることができます。
あなたは英文翻訳調で書くときに通常の日本語では唐突に感じられるような例示の挿入を自然に用いることができます。
セミコロンはコロンよりもより弱い区切り記号です。
これの後ろには短い説明などが続きます。
これに関してあなたは、英語では後ろから説明などを加えやすいと言うことを知ることで十分でしょう。

2-10:単語の言い換え

2-8で述べたように、英語は同じものを別の言葉で書きたがります。

例えば仕事は役割・働き・天職・役目などに動的に置き換わります。
これを再現するためにあなたが取りうる最も簡単な手段は類語辞典を買うことです。
それは英文翻訳調を書いていないときにも大いに役立つでしょう。

2-11:読点の配置

あなたは日本語を書くときに読点を単語の区切りの自由な位置に置くことができます。

一方英語は意味のまとまりを重要視するのでカンマの位置はそれほど自由ではありません。

英語でカンマが打たれるのは一般に節の区切りで特に分けたい場合と、列挙するときの要素間です。
英語は単語間にスペースが空くため特別の記号で視覚的な空間を開ける必要が薄いので、日本語よりも点が少なくなります。

英文翻訳調は英語に従い読点を意味上の区切りに控えめに置きます。

2-12:専門用語の処理

あなたは英文翻訳調の文章を書くときに英語由来の専門用語をどのように書くべきかという問題に悩まされるでしょう。
残念ながらこのことについての完全な正解はありません。
この節はその代わりにいくつかのヒントを提供します。

専門用語の処理として考えられるのは

1.原文のままで書く
2.カタカナで書く
3.日本語に翻訳する

1以外の手段が不適切ないくつかの場合があります。
それらは例えば略語やそれ自身をそのまま用いなければならないもの(固有名詞など)です。
これらの原語が初めて出るときあなたはそれらについて日本語で説明を加えた方がよいでしょう。
しかしそれはそれが「AはBと訳す」という書式ならばあまり好印象ではありません。よりよい例は

HTMLにはバージョンごとにDTD(Document Type Definition:文書型定義)というものがあります。(秀和システム『詳解HTML&スタイルシート辞典)

また、人名についても原文で書くことが適切な場合があります。

日本語は外来語の記述にカタカナを用いるという優れた記法を発明しました。
実際にこれが最も一般的で無難な選択肢です。
しかしあなたは接続詞以外のすべてがカタカナであるという状況に気を付けねばなりません。
そのような文章は日本語の可読性を大きくそいでしまうでしょう。
あなたはその問題に直面したときにいくつかの単語を日本語訳すべきです。

あなたが用語の日本語訳を考えることは常に適切だとは限りません。
その用語がカタカナで定着しているものならば翻訳はかえって読者を混乱させるでしょう。
用語をカタカナで書くことはそれが用語であることを暗示します。
用語と純粋に創造的な表現を区別することは可読性と論理性の観点から推奨されます。
ただし必須ではありませんがあなたは初めて出る用語に日本語で説明を加えることが望まれます。
また一部の用語は日本語するべきです。
こうした判断はあなただけが基準です。

第3章 英文翻訳調のマクロな技術

3-1:導入

この章では一つの文書全体の構成レベルの英文翻訳調について説明します。

しかし実際にはこの章に書かれた内容を実践することは英文翻訳調と見なされません。
それらは英文翻訳調の「雰囲気」を得るだけのためには不要でしょう。
しかしもしあなたが論理的あるいは説明的な文書–英文翻訳調であれそうで無かれ–を書く必要に直面する、またはしているならば、この章の内容は多かれ少なかれ参考になるでしょう。
そうです、この章が扱うのは文体ではなく構成です。

日本語は歴史的に歌と物語の言語で、それに対し英語は契約の言語です。
この用法の重心の違いは文章の書き方の技法の発展に違いを生みました。
英語の詩人は和歌の表現技法に影響を受け、日本語の法律家はヨーロッパの体系付けを学びました。
この章に書かれるのは後者に属することの表層です。

3-2:段落割り

あなたは初等教育の国語の授業で、ある文章の意味上の段落分けを行ったことがあるかもしれません。
私たちは思うがままに段落を分けてしまうことがありますが、それらは本来は意味上のまとまりであるべきです。
あなたはある段落を書き始める前にその段落に何を書くかを整理する必要があり、それ以上のことを書かないように努力する必要があります。

3-3:章・節割り

ある程度大きな文書は章・節に分けることで読みやすくすることができます。

章・節のうち先頭のものには他のそれらに一般に妥当することをまとめることが多いようです。
このことは読者が第1章を読めばその文書が、第1節を読めばその章が自分にとって必要かどうかを判断するのを助けます。
あなたはもしかするとあなたの文書の第1章第1節だけを読んでそれを読むことをやめる読者がいることが面白くないかもしれません。
しかし考えて下さい。
あなたは自分に必要かどうかが判らない文書を好んで最後まで読みますか?
内容を早めに概観させることは読者の興味を惹き付けるのに有効です。

文書が辞書的な使い方を想定するならば、章・節には適切な名前を冠すべきです。
しかしあなたはそれを先頭から読み進む律儀な読者の存在をいつも忘れては行けません。
彼らのためにより前の章・節にはより簡単でより多くの人に有用なものを置くべきでしょう。

3-4:謝辞、まえがき、導入の書き方

謝辞は通常、その文書を書くにあたってお世話になった方々の名を列挙します。

それらは単に名前だけではなく「〜をしてくれた…氏に感謝します。」のように彼に感謝すべき事由も書かれます。
書くべき人々の名が尽きたら最後に読者に対する謝辞を入れることが多いようです。
謝辞を書くべきかどうかはその文書の性質に依存します。
一部の文書はこれを書くべきではありません。
それが書かれる場合はまえがきまたはあとがきに一体化されることが多いようです。

まえがきは多くの場合、書くに至る経緯と文書の狙い(内容や対象とする読者など)がこの順で書かれます。
まえがきが長いことはあまり好ましいことではありません。
あなたが書きたいことは読者が読みたいこととは必ずしも一致せず、特に直接的な内容と離れたまえがきなどでそうですが、世界にはそれでもまえがきから読む律儀な読者が存在します。

導入に書くべき内容は3-3で述べたことに共通します。
すなわちそれはその他の内容を概観させるものであり、読者にその文書を最後まで読むことでどれほど素晴らしいことが得られるかを知らせるものであるべきです。
ここで読者に気さくに語りかけることは文書の内容および読者の役割によっては適切です。
参加型のコミュニティの文書はフレンドリーである場合が多いようです。

付録

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再配布はこれを認めます。
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