半額弁当をめぐる熱き闘い。『ベン・トー』を読むとポジティブになる!

人は、何のために生きるのか?

テンションを上げたい時、モチベーションを回復させたい時にぜひ読んでほしい!
個人的にものすごく大好きなライトノベル、『ベン・トー』シリーズを紹介します!

概要

ジャンル:半額弁当バトル
著者:アサウラ
出版:集英社スーパーダッシュ文庫
既刊:15巻(本編12巻+番外編3巻)

あらすじ

高校生、佐藤洋(さとう よう)はある日スーパーを訪れる。

半額になった弁当を見つけ、それに手を伸ばした瞬間、彼はすさまじい戦いに巻き込まれ意識を失った。

いったい何が起こったのか?

––実はそこは、半額弁当をめぐって熾烈なバトルロワイヤルが繰り広げられる戦場だったのだ。
「たかが」半額弁当を手に入れるため、血を流し命をかける者たち。

その不可思議な戦いに魅せられた佐藤は、たまたま居合わせていた同級生・白粉花(おしろい はな)とともに半額弁当の奪取を試みる。
しかし突如として現れた美女、「氷結の魔女」に完膚なきまでに叩きのめされてしまう。

そして、その美女が佐藤に告げた言葉とは…。

半額弁当を手に入れるため、命をかけた者たちの戦いが始まる。

ここが面白い!

ワケの分からない熱さ

「半額弁当を手に入れるために命をかける」

一言でいってしまうと、そういう物語です。

何となくお気づきの通り、基本的には壮大なギャグ作品なのですが、「ただのギャグラノベ」では終わらない魅力がたくさん詰まっています。

その筆頭は、熱さ。

苛烈な闘争をくぐりぬけて半額弁当を手に入れようとする者たちは「狼」と呼ばれますが、苦難に押しつぶされ強敵に叩きのめされそれでもあきらめることなく再び立ち上がって勝利(半額弁当)に向かっていく彼ら彼女らの生き様は、とても崇高で輝いています。

情報過多であふれる現代日本。
ともすれば「何もやりたくない」「自分が何をしたいのか分からない」「青春してる人がうらやましい」という気分になりがちです。

そんな時に読んでみると、登場人物たちの完全に一貫した「はたから見るとくだらないことに全力を注いでいる」というスタンスが、ギャグを超えた感動へと昇華されます。

実際、彼ら彼女らはきわめて真摯かつひたすらに前向きです。

「自分が心の底から求めるもののため、死力を尽くして目的へ手を伸ばす」という行動は、対象が半額弁当だから滑稽に見えてしまうのであって、その本質は人生におけるあらゆる目的達成の真髄にせまっています。

「他人が見たら指差して笑うかもしれない」
「でもそんなことは関係ない」
「自分がしたいからするんだ!」

自らの気持ちにウソをつかず、礼儀を持ちて誇りをかけて疾走する狼たちの夜の戦場。
そこで生きる、何かに全力で打ちこむ者たちの姿。

1回読むと
「うわあああ自分も何か頑張らなきゃ!」
っていう気になってものすごくモチベーション上がります。

弱肉強食のシビアな世界

半額弁当を狙う狼たちがしのぎを削る場は、スーパーの中とはいえ紛れもなく「戦場」。

覚悟と決意をもってそこに降り立つと、あらゆる区別や差別を超えた自然界唯一のオキテとも言える「弱肉強食の法則」だけが適用されます。

殴る、蹴るは当たり前。
投げ飛ばされたり関節を極められたりも茶飯事。

時には天井から落下したり硬い構造物に猛スピードで激突したり体をねじ切られそうになったりして「いや死んだんじゃね?」って思うことが各巻平均で3回ほどありますが、とにかくその戦闘描写は熾烈をきわめます。

特に昨今のフェミニズム事情に真っ向勝負を挑むかのような「男女平等ぶり」にも定評があります。

僕は立ち上がろうとしていた女の側頭部に蹴りを打ち込み

※『ベン・トー<3> 国産うなぎ弁当300円』より

……うん。
ここだけ抜粋するとものすごく鬼畜に見えてしまう。

まぁほとんどの女性キャラは男性より強いので、実際には女性に殴られてボロクズのように宙を舞う男性の勇姿を拝めるのが特徴です。

年齢・性差・出身・宗教その他もろもろの個人の事情。
そういったものが全て剥ぎ取られ、「半額弁当を奪取するためのチカラ」だけが純粋に追い求められる世界。

半値印証時刻(ハーフプライスラベリングタイム)が訪れれば、そこに存在するのはただ「狼」のみ。

男も女も関係ない。
望んで死地に入った者には全力をもって相対する。

そういった意味での「手加減ぬき」「全力勝負」が成立することで救われるキャラが出てくるのも見どころです。

作中もっとも有名なフレーズの1つである「弱きは叩く、豚は潰す」という一文はその実情をいかんなく表現していると言えるでしょう。

「常識」にあふれる現代日本。
ともすれば失敗を恐れ、挑戦する前から何かと言い訳を考え、結局なにもせず時間を浪費していく人生を送りがちです。

そんな時に『ベン・トー』を読むと、
「まあ失敗してもここまでひどい目には遭わないだろう
っていう気になってやる気がでます。

突き抜けたギャグ

『ベン・トー』には笑いを超えた深みがある。

そのことを訥々と述べてきましたが、一番の魅力はやっぱりギャグの面白さです。

平成23年4月6日、夜。
僕は、死んだ。

というモノローグと共に開始10秒で主人公が弁当争奪戦に巻き込まれて死ぬ(※死んでない)アニメ版の抱腹絶倒ぶりはあまりにも有名ですが、原作の書籍版の破壊力はそれ以上です。

とりわけ、話の本筋の合間に何の脈絡もなく突如として数ページぶち抜きで出現する「過去のエピソード」は鉄板です。

特に石岡くんの話はそれだけをまとめても別作品になるのではってくらい。

下に引用するのは私がお腹を抱えて笑ったエピソードのひとつです。

“国語の宿題は作文で、題は『両親の結婚した理由』です”

(中略)

間違いなくこの作文は満点だ。
そんな絶対の自信を持って登校したものの……まぁ、案の定国語の時間はカオスの渦に巻き込まれることになる。

出席番号順にみんなの前、つまり教壇の上に立って読み上げるのだが、赤井ちゃんの『お母さんは本当は違う人が好きだったけど、私が出来たせいでお父さんと結婚せざるを得なかったそうです』という一文が劇場の幕開けブザーのように教室に響き、地獄が始まった。

『母さんには借金があって誰でもいいからお金持ちの人と……』といった日本の格差社会を浮き彫りにした石岡君や、『コスプレ会場でカメコをしていたパパがコスプレイヤーのママにしつこく言い寄って……』と日本のサブカルチャー文化の姿を鮮やかに写し取った江藤さんらが見事な社会風刺を織り込んだ作文で先陣を切っていく。

続く加戸君は少し方向性を変えて『教祖様が絶対神マールトミーのご神託を頂き、これにより両親はお見合いをし……』という少しオカルト風味を添加し、展開のバリエーションに幅を持たせた。

混沌はより一層深まっていく中、誰もが予想し得なかったこの授業のダークホース的存在として降臨したのが小口君である。

『父と母が結婚した理由――小口雅彦。僕にはお父さんとお母さんがいないのでわかりません。』
という世界で一番短い作文が披露され、僕らは一様に言葉を失った。

それでもなお気丈な顔をして席に戻る彼を見て、僕らは畏敬の念を抱かざるを得なかった。

何が凄いって小口君のご両親とはその二日前ぐらいに普通に近所のスーパーで出くわしていたし、小口君本人に至ってはその日の朝「やっべー、作文書くの忘れてたよ、どぅっすかなぁ」とか一人ぼやいていたのをクラスの半数ぐらいは聞いているのである。

※『ベン・トー<4> 花火ちらし寿司305円』より

こういう「あまりにもツッコミどころの多い内容をやたらマジメな文章で書きなぐる」というテイスト、めっちゃ好きです。

謎の感動

半額弁当をめぐる戦いには、さまざまな人たちが登場します。

男子高校生、女子高校生、今は一線を退いた者、半額神(半額シールを貼るスーパーの店員)となった者、まだ狼にはなっていない者、何の関係もない者……。

毎夜みずからの命を削って戦いにおもむく彼ら彼女らには、その戦場に立つ理由があり、情熱があり、目的意識があります。
たとえ悪であっても。

文明が産んだわずかな領域に生きる者たち。
あまりにも現実離れした彼ら彼女らを突き動かす、あきれるほどの人間臭さ。

そこにいるのは「目的を実現したい」と願い努力する、何の変哲もない等身大の人々。

成長し、反目し、決別し、闘争し、そして何かを得て、あるいは失っていくその一連の推移には、ライトノベルの王道ともいえる「成長と前進」が多分に含まれています。

特に、主人公である佐藤洋と主役級キャラたちの成長ぶりは、読むものの心を打ち明日への活力を与えてくれます。

中でも、アニメ化されなかった4巻の感動っぷりと言ったらもう、もうですね……。

絶対読んでくださいとしか言いようがないです。

各巻紹介

1巻:「サバの味噌煮290円」

お前にとって半額弁当はただ売れ残って古くなった弁当でしかないのか?

記念すべき第1巻。

「半額弁当をめぐって己をかける」という謎の魅力がぎゅっと詰まった巻です。

個人的に、槍水(やりずい)先輩の「諦めの溜息を吐息とする負け犬の生活は優しく、諦めすらも忘れた豚の生き方は安楽だ」というセリフから始まるハーフプライサー同好会勧誘時演説にしびれました。

2巻:「ザンギ弁当295円」

「……それでも道に迷った時は、戦いなさい。
友と呼べる敵が、きっとあなたを導いてくれる。
思い当たる人、いるでしょ?」

物語の根幹に深く関わってくる著莪あやめ(しゃがあやめ)、二階堂連(にかいどうれん)が初登場する第2巻。

シリーズを通してトップクラスに非道な悪役が出てくることでも知られています。

手に汗握ります。

3巻:「国産うなぎ弁当300円」

「行きますわよ鏡! あの最低で最高のクソ野郎どもをぶちのめして差し上げますわよ!」
「はい、姉さん!」

「オルトロス」の二つ名を持つ沢桔(さわぎ)姉妹が初登場。
そして作中屈指の癒しキャラ井ノ上あせびも本巻から本格的に目立ち始めます。

アニメ版とは少し異なった展開をたどる「オルトロス」編はいろいろ感じ入るものがあります。
読む手に力がこもるというか。

ところで、私は上記の「井ノ上あせび」という人物の思考が好きです。

この人物は見てて空恐ろしいほどの運の悪さが特徴で、車にはねられたり建物から落下したりと、頻繁に不幸に見舞われています。

しかしそんなことを気にもとめず(気づかず)、良いことにだけ目を向けて笑いながら

相変わらず自分は運がいい。
自分は本当、どうしてこんなに恵まれているんだろう。

と本気で思ってしまえる圧倒的プラス思考を。

私も見習わないとなーって背すじを正される思いです。

あと大好きな人のために頑張る姿が単純にかわいい。

4巻:「花火ちらし寿司305円」

「はい。必ず、勝ちます! 勝ってみせます!」

すごくおすすめ。
絶対に読んでほしい巻。

尺の都合上、この4巻からの話はアニメで描かれませんでした。
それだけに知名度は低いのですが、話の内容はシリーズ屈指の完成度です。

特に圧巻だったのは、メインとなる第3章「ギリー・ドゥー」最終盤。

ある人物とある人物が、お互いゆずれない「大事なもの」のために全身全霊で闘うのですが……。

熱い。
ひたすら熱い。

具体的に言うと上の方で挙げたある人物のセリフ。
これが出てきた時の鳥肌の立ちっぷりといったら。
もう何か「いつまでも終わらないでくれー!!」っていう気持ちになります。

本巻に限らないのですが、『ベン・トー』シリーズでは「懸ける」という言葉がよく使われます。

何かを「賭ける」のではなく、己を「懸ける」。

勝つことはもちろん第一目標ですが、勝つためにはそもそも自分の全力を尽くさねばならない、手を抜いてはならないということに重点が置かれた表現です。

この言葉はシリーズを通して、くりかえし何度も登場します。

私はこの言葉が大好きです。

そんな感じなのでぜひ4巻までは読んでください!

そしたら5巻以降も自動的に読みたくなっちゃいますから!

5巻:「北海道産炭火焼き秋鮭弁当285円」

でも、自分ではない何かになんてなりたくない。

とある人物が悩みます。

「本当の自分をごまかしてウソをつき続ければ、強く願っていた夢が叶う」
「だから、夢のために自分をごまかそう」

実際にそういう状況が生まれます。
その人物は自分をだましつづけます。

でも、半額弁当争奪戦を通じてその人物は気づくのです。

本当の自分に。

本当の自分を捨てて『憧れだったもの』を手にしても、絶対に後悔が残ると。
その後悔は二度と消えないと。

……その後、誰がどんな行動をとって、どういう結末に至るのか。

続きはぜひご自身の目で確かめてください。

5.5巻:「箸休め~燃えよ狼~」

番外編の短編集。

さまざまな登場人物たちの日常風景が垣間見れます。

本筋には思いっきり関係ないので必ずしも読む必要はありません。

私のお気に入りは白粉花(おしろい はな)のエピソード(最後の前向きなアレ)です。
あと、主人公と著莪の壮絶な早く結婚しろっぷりですかね。

6巻:「和栗おこわ弁当310円」

「……センパイ、私もノーブラですよ」

注:これまでで一番ラブストーリーしてる巻です

7巻:「真・和風ロールキャベツ弁当280円」

※後日追記予定

7.5巻:「箸休め~Wolves, be ambitious!~」

※後日追記予定

8巻:「超大盛りスタミナ弁当クリスマス特別版1250円」

※後日追記予定

9巻:「おかずたっぷり! 具だくさん! 香り豊かな欧風カレー弁当すぺしゃる305円」

※後日追記予定

9.5巻:「箸休め~濃厚味わいベン・トー~」

※後日追記予定

10巻:「恋する乙女が作るバレンタインデースペシャル弁当350円」

※後日追記予定

11巻:「サバの味噌煮弁当【極み】290円」

※後日追記予定

12巻:「デザートバイキングプライスレス」

※後日追記予定