18年ぶりに復活したポケットビスケッツに感動した話

2018年8月25日。
24時間テレビにおいて伝説の音楽ユニット「ポケットビスケッツ」が一夜限りの復活を果たしました。

死ぬほどうれしかったのでいろいろ感じたことを書きなぐります。

ポケビ(ポケットビスケッツ)とは

ポケットビスケッツとは、日本テレビのバラエティ番組「ウッチャンナンチャンのウリナリ!!」から誕生した伝説の音楽ユニットです。
活動期間は1995〜2000年。

CDの売り上げ100万枚以上、オリコン週間チャート1位獲得など、その絶大な人気は当時の社会現象にもなったほど。

バラエティ番組の企画から生まれた音楽ユニットが大ブームを巻き起こし全国を席巻する––。
それは日本音楽史上においてきわめて異例の出来事でした。

ポケビ全盛期に小・中学生時代を過ごした方にとってポケビの曲はDNAのごとく魂と記憶に刻みこまれており、メロディーが耳朶を打った瞬間に幼時の思い出が大量にフラッシュバックする、そんな、もはや人格を形成する一種の肉体そのものであるとすら言える音楽を届けてくれる。

それが……ポケットビスケッツです……!

「100万人署名が集まらなかったら解散」とかいう割とムチャな条件が課せられ、日本全国の小・中学生が必死に署名を集めてようやくシングルが発売されるみたいなこともありました。

その時に出た曲が今回のメインとなる「Power」です。

赤いエプロンドレスに大きなリボン。
思い出せる……当時を思い出せるぞ……!!
もうこの動画見てるだけで泣く。

「ブラックビスケッツ」っていうライバルユニットも出てきたりしました。

うわあああああなつかしい!!!

まあそんな感じでいろいろあったのですがポケビは2000年に活動を休止。

以後18年にわたり、一度として活動再開が行われないまま現在に至っていました。

……つい先日までは。

24時間テレビで一夜かぎりの復活

イントロ

紺青色に染まるステージ。
空間に緊張感が満ちる中、静かに始まるウッチャンのピアノソロ。

と同時にタイトルコール。

1998年発売オリコンチャート1位
Power

「あの名曲が聴けるのか……!」
(30歳前後の)聴衆のテンションは否が応にも上がります。

ちなみにウッチャンが弾いているのはポップスに強いとされる電子キーボード「Roland RD-700NX」。
鍵盤数は88。カバーする音域はゆうに7オクターブ。
プロミュージシャンも愛用する本格機です。
さすがリーダー。

キーボードのメロディーラインは単純なように聞こえますが意外とクセモノです。
初回の打鍵(右手→両手)の8拍後に同じ音を鳴らす(右手→両手)のですが、そのタイミングを計る目安となるのは単調なドラムの拍子のみ。
急に頭が真っ白になってしまい演奏が止まってしまう(”譜面が飛ぶ”)のは、得てしてこのようなシチュエーションです。
「初っ端のどソロ」という極度の緊張を強いられる状況下で、自分の現在地を見失いやすい進行においても、見事弾ききり18年の空隙を超えてボーカルへと繋げるその手腕、その度胸、男気。
さすがリーダー。

なお、その後ろでは客席に対して半身に構えた千秋さんがテンポよく体を前後させ腕で拍子を取りカナリアイエローのスカートがふりふりと揺れ

千秋さんめっちゃかわいい

南風よ

南風よ伝えてよ あふれる想い あの人まで

伝説となった歌い出し。

「み」「な」「み」まで聴いた時点で誰もが感じる千秋さんの圧倒的歌唱力。

極めてハリのある声量。
伸びのある歌唱法。
修練を積んだ者にのみ出しうるビブラート。
一音も外さずピタリと当ててくる驚異的な音感。

「あの人まで」で咆哮する見事なクレッシェンド。
ピアノとドラムだけの穏やかな伴奏をともに引き上げて、気流に乗って一気に上空へ急上昇するかのような突出したパワー。

千秋さんめっちゃかっこいい

間奏

1番のAメロが始まるわずかな間に間奏が入ります。

画面では確認しづらいのですが、ここではウドちゃんと千秋さんが「首を軽く傾けながら両手と片足をキレよく振り上げる」という本局における特徴的なダンス、通称「Powerステップ」を実行しております。

ウッチャンは真面目にピアノを弾いておりますが20秒後に覚醒して狂乱のステップを踏んでくれるので座して待ちましょう。

あとウドちゃんは常時笑顔です。
いいですよね。
ちなみに本記事の最終的な結論は「音楽」のすばらしさはウドちゃんの笑顔に集約されるというものになります。

リーダーのお約束

1人で泣いた夜もあったわ

の歌詞と同時に、ウッチャンが激しくヘッドバンキングしながら両手と片足を振り上げつつ高速で前進するダンス、通称「クレイジーPowerステップ」を猛然と敢行します。

これはポケビ現役活動時代からの「お約束」で、「曲が始まって早々に演奏を放棄」「突如としてステージを横断」「そしてカツラが謎の力により落下」という笑いどころになっています。

往年のファンの方の多くは、このシーンを見て一気に当時の情景が蘇ったことでしょう。

無理して笑ってた

という歌詞と同時に進行するこの一連の流れには、何か深い意義を見出せます。

さて、ウッチャンがステージの反対側(ギターを弾いてるウドちゃんのところ)にたどり着きました。

いつもあなたは そこにいたのに
素直に慣れなくて

ここでたっぷり8小節分にわたってウッチャンと千秋さんによるウドちゃんのギターソロアピールが行われます。

「みんな!ウドちゃんがギター目立つパート弾いてるから!見て!」

っていうアピールです。

バンドだとよくあります。
「ドラム!」ってボーカルが振った後にドラムソロのパートが入るとか。

ただここでは、キーボード担当の人がキービードを放っぽり出して、あげくステージの反対側まで大遠征し、7〜8秒もかけてすぐ隣でアピールするのですから並大抵のことではありません。

このあたりの型破りっぷりも全体構成として非常に重要なパートになってきます。

サビ

南風よ伝えてよ
あふれる想い
あの人のところまで

不意に演奏がブレイクし完全なボーカルソロで進行するサビの入り。

その直後、本曲で初めてポケットビスケッツ全メンバーによるコーラスが幕を開けます。
男性陣は基本的にはボーカルと同じキーですが、要所要所で低音のハモリを入れてくるのが非常に劇的で奥行きを感じさせる熟練のテクニックです。

もはや演奏という役割をぶん投げて「一緒に歌うこと」に特化したその姿は、「音楽」の真髄に迫る重要なキーポイントと言えます。

ちなみにここでボーカルが

どんな涙 流したとしても

っていう歌詞を歌い上げるのですが、そのとき千秋さんが泣きマネをします。

千秋さんめっちゃかわいい

さらにその直後、ウッチャンが

「もいっちょー!!」

って叫んで再度のサビに向けて盛り上げます。

リーダーめっちゃかっこいい

最後のサビ

透明な

千秋さんめっちゃかっこいい

各方面で大絶賛となった転調シーン。

ここの表情とか声の出し方とか「透明な」の「め」「い」「な」あたりの発声とか完全にトッププロ歌手。
さすが一世を風靡した歌姫……!!!

物語の行方は

ここのハモリ最高

ハッピーエンドのかけら集めて

ここ!!

この「ハッピーエンド」のところで「Power」の電飾文字を映し出して一気にカメラをズームアウトさせてステージ全景→ポケビ3人に焦点を持っていく至高のカメラワーク!

カメラマンさんめっちゃかっこいい

遠いあなた 思い出して

「して」で高度の音域跳躍。

千秋さんめっちゃかっこいい

もらった勇気 忘れないからね

はい!!!
私も忘れません!!!
ずっと覚えてます!!!
ありがとうございます!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

まとめ

音楽とはパワーである

「Power」。

この曲が伝えたいメッセージとは?

あなただけでも
望んでくれるのならば
声の限り 歌い続けるって
誓うよ

透明な絵本の中から
動き始めた物語の行方は
ハッピーエンドのかけら集めて
続いてゆく
遠いあなた 思い出して

もらった勇気
忘れないからね

それはおそらく、前進するための力。

今は透明の状態でゼロだとしても。
たとえ1人でもその未来を望んでいれば生ある限り前進を誓えるような。
【どんな涙】を【流したとしても】【ハッピーエンドのかけら集めて】【走り出】せるような。

曲の最後にもある「勇気」が意味的には近く。

しかし統合するなら、曲名であるパワーがその答えでしょう。

この曲は、「この曲を聞いた人がパワーを得て明日に向かって走り出せるようになる」ことをテーマにした、そういう曲です!!

きっとそういう曲です!!!!

いや実際「ハッピーエンドのかけら集めて走り出そう」ってめっちゃ良いフレーズですよね。
「ハッピーエンド目指して」じゃなくて「かけら集めて」ですからね。
未来を紡ぐ素は”今”にあるから、先のことだけ考えてあれこれ悩むのではなく、目の前のことに取りかかれということ。
いきなりハッピーエンドなんて迎えられないから、ハッピーエンドのかけら集めながら毎日がんばっていこうよ的な。

何か……。
ちょっと強くなれる気がしますね!

音楽とは日常である

オリコンニュース:ポケビ、18年ぶり復活の舞台裏 千秋「いつかくるこの日のために練習していた」

このニュース記事を読んだ瞬間、いてもたってもいられなくなりました。

ーー千秋さんはこの日を迎えるまで歌っていたりしたのですか?

【千秋】何もしてないです。この日のためにずっとコツコツ練習していまし(笑)。いつかくるこの日のために。

【内村】ホントかよ!

【千秋】いつ呼びだされてもいいように。

18年経ってもなお、いえむしろさらに上手くなったんじゃないかレベルの歌唱力に度肝を抜かれた私ですが、上記の千秋さんのコメントを見てもう何かほんと何かほんともう本当に

いや18年ですよ?
そんなずっと練習し続けられます?
2度と「この日」は来ないかもしれないのに?

でも、来た。
練習していた甲斐が、あった。

あのステージで、近年稀に見るほど誰よりもまぶしく光り輝いた理由は、そのハッピーエンドに到るまでに、毎日コツコツとかけらを集めていたから……。

ふおおおおおおおおおおおお
すげえええええええええええええええ

ああああああああハッピーエンドのかけら集めて走り出していたのかあああああああああグループが解散して透明になってしまった絵本の中からあああああああ

んんんんん

あー

ちょっと涙腺が。

私も頑張らなきゃって思いました

というか千秋さんがポケビにかける想いとかWikipediaで読むとですね……。

泣くっす。

Wikipedia:ポケットビスケッツ

いえあのですね?
余談なんですけどね?
「18年前」と「2018年復活ライブ」の時とでは、千秋さんの歌い方がかなり変わっているんですよ。

18年前に主流だった歌い方
  • スタッカートの効いた発声
  • 音の粒を目立たせる
  • 一語一語はっきりと
  • 子音重視
  • 声量を抑えて歌手独自の声質を前面に
  • 一音を伸ばして音程を上下させる

こういう感じです。
当時は「こういう感じ」の歌い方がメインでした。

2018年現在、ボーカルの歌唱法の潮流は以下のように変化しました。

現在(2018年)主流の歌い方
  • 音を切らず滑らかに歌い上げるレガートの発声
  • 太いメロディーラインに声を乗せる
  • ビブラートの多用
  • 母音重視
  • ノドを開いて声量を最大限に
  • 歌詞一語での急激な音程の上下をなるべく遅延させる

はい。
復活ライブを聴いて「千秋さん歌さらに上手くなったのでは?」と思った方も多いでしょう。
たゆまぬ修練を続けてこられたので、歌唱力もポケビ全盛期以上に上がっていると感じます。
実際そうだと思います。

そして、それに関しては「千秋さんが現在主流の歌い方に合わせてPowerを歌った」という側面を見逃すわけにはいきません。

復活ライブでのパフォーマンスは、現時点でデビューしている他の歌手を押しのけて余りあるポテンシャルを我々に見せつける結果となりました。

いつか来るこの日のために、音楽性や歌唱法のストリームが一変した現在でも楽曲の魅力を最大限に伝えられるように練習してきて、それを本番で十全に発揮する。

千秋さんめっちゃかっこいい

ちなみにサビの一部「あの人の」「物語の」では、18年前に流行っていた強烈にスタッカートの効いた歌い方を踏襲しています。
最新系にしながらも、往年の”味”を残す。

ちょっと完璧以外の言葉が見当たりません。

音楽とは音楽である

ボーカルを始めとする、きわめて高い完成度の音楽性。
「笑い」を取り入れた型破りなステージパフォーマンス。

ポケットビスケッツとは何だったのか?

最後にこの動画をご覧ください。
今から20年前の1998年12月31日に行われた紅白歌合戦の一部です。

紅白という大舞台で「ポケットビスケッツ」とそのライバル「ブラックビスケッツ」が共演しました。
熱い。

あとナンチャンがサックスめっちゃ上手い

あと天野っちの歌唱力が異様に高い

あとビビアン・スーさんがとにかくかわいい

ブラックビスケッツも良いグループでしたよね。
同年代で深夜耐久カラオケとか行くと誰かが1回は「タイミング」入れます。

はい。
何でしたっけ。
ああそうだ「ポケビとは何か」って話だ。
「ブラビとは何か」も追加しましょう。

先の紅白のステージを見ていかがでしたか?

両グループとも「楽しんでもらおう」という心意気が伝わってくるパフォーマンスでしたね。

ですがそれ以上に「自分たちが楽しもう」という雰囲気にあふれています。

そうです。

これが音楽です。

自分たちが最大限に楽しめば、音を通して楽しさが波及する。

それが音楽です。

何か……なのでそうですね……

笑顔で音楽するポケビが大好きです

ブラビも大好きです

いつかまた、彼女たちの音楽を聴けますように